タイの優しい風にのって
小黒文絵さん
タイ
「今日は、お元気ですか?」と溌剌とした声がわたしのところへ近づいて来る。この瞬間、パッと心に明りがつき、気分がのっていく自分を素直に感じた。 インターンシップのカレッジインターンとして紹介していただいたのは、タイのプリンス・オブ・ソンクラー大学のハジャイ校。最初の不安をふっと消し飛ばしてくれたのは学生の元気な挨拶だった。タイの学生はとてもシャイだと耳にしていたが、彼らのやわらかさにわたしは親しみをおぼえた。タイでは日本語はとても人気のある学科だ。日系企業への関心も高く、就職を考えている学生もおり、授業中に聞かれる質問もとても実践的なことだったりする。 わたしの滞在していたハジャイキャンパスでは、先生・学生・事務員を含めて約2万人が生活する。広大な敷地内には九つの学部や大きな病院もあり、生活に関するものすべてがそろってしまうため学外に出なくても生活できる。ビルや体育館の一角では朝晩とエアロビクスが行われていたり、池の周りをジョギングしたりと人々とのコミュニケーションの場になるところは多くある。 タイ人を観察してみると、何でも細かく作業しようとするのが分かる。料理の味付けもとても繊細で、一見そうでもないような料理でも、とっても丹精込めて作っているのである。授業の一環として、学生たちと一緒に日本料理を作ってみた。すると、思ったとおりとても細やかに作っていく。おむすびを握るすがたが、わたしに親近感を抱かせた。 タイ人をおとなしいと表現する人もいるが、彼らの人に対する気遣いがとても慎み深いものであるとわたしは感じている。仏教の教えと、元来アジアにあった人に対する感情表現が、わたしには「優しい風」に感じられたのだった。 今回のタイでの日本語教師としての活動を通し、今までになかった特別なコミュニケーションをはかれたことにわたしは感動をおぼえた。最後に、タイでお世話になった先生方、そして優しい風に「ありがとう、また会いましょう」