お花の先生の家で生徒兼アシスタントに
菱沼明子さん
イギリス
菱沼さんを受け入れてくれたのは、ウェールズに近いChepstowに住むアルウィン・ペイジさん。彼女はカレッジの講師も勤めるお花の先生で、菱沼さんは彼女の家に暮らしながら、いわば生徒兼アシスタントとして3カ月の多忙な日々を過ごした。「とにかく忙しい先生で、カレッジ4校で教えるほかに、近くの町のシニア向けのデモンストレーションなどの活動もしているし、休みの日には各地のガーデンショーめぐりをするという感じで、私もホームシックになるヒマがありませんでした」毎日教室で使う材料の花は、カットしたその日には使えない。長持ちさせるためには、前日に庭に咲いている花をカットし、紙にくるんでバケツに入れ、ひと晩暗い部屋に置いておく作業が必要だ。そうして準備したたくさんの材料を抱えて、先生と一緒にカレッジに着けば、授業は朝の10時から午後の3時、4時まで一日中。菱沼さんは辞書と首っ引き、必死で英語でノートをとりながら、生徒にまじって講義も受けた。「生徒は女性ばかり、中には花屋さんで働きながら、将来自分の店を持ちたいという若い人もいましたが、年配の方が多かったですね」菱沼さんはもともとは短大の英文科を出て普通の会社に就職、営業のアシスタントをしていた。「でもこのままでいいのかなあって。一般常識は会社で教わったけれども、企業の営業では男と女の格差もあります。私は結婚しても仕事はずっと続けたかった。でもそれには女性は手に職をつけなければだめなんだと思って、3年で退職したんです」アフター5に2年間通っていたフラワースクールに本気になりだしたこともあり、イギリスへの「花留学」も考えたが、あまりの値段の高さに絶句。「3カ月で280万円なんていうのもあるんです。でも折角だから今回は私も、ロンドンの有名なコンスタンススプレイという学校で、キャンドルアレンジメントの授業を一日だけ、お金を払って受けました」意外だったのは、みんなが「生け花」を知っていて、フラワーショーでも日本的なものが人気だったりしたことだ。「私がイギリスに憧れるのと同じで、日本のことを知りたがっていました。私は生け花はちゃんと習っていないし、みんなは流派にまでくわしいので、こわくてとても見せられませんでした」(笑)帰国したあとは花屋さんでアルバイト。店頭での花束作り見ていると、みんなやり方が違うので、今のところ先輩のマネをして覚えている。「将来は教えるようにまでなりたいと思ってますけれど、もうこれからは働きながら現場で経験を積まないとダメ。ボーナスもないけれど、生けこみができるまであと3年は修業だ、と思ってがんばります」