子どもに差があるのは当たり前。教師の個性も光る英国の学校
堺邦彦さん
イギリス
「僕はイギリスが好きで、特にミュージカルを見るためにロンドンには何度も旅行しているんですが、もっと英語がわかるようになりたくて」堺さんは現役の小学校の先生。思い切って願い出た休職の1年のうち、初めの5ヵ月はIIPスタディセンターの「海外生活をめざす人のための英語講座」に通い、若い人たちにまじって英会話を習う。「学生の時以来ですからね。ディベートから英語の俳句まで、生徒に戻って勉強できて面白かったな」そして後半、いよいよイングランド中央部マンチェスターに近い小さな町Clitheroeへ。幼稚園から小学校まで200人の生徒は、堺さんの勤める東京の小学校の3分の一。ひとクラスもたった22,3人だ。「午前中は英語と算数だけ。僕の授業は午後なんですが、算数のアシスタントもやりまして、それは英語の勉強にもなって楽しかった。日本と違うのは子どもに能力格差があるのは当たり前ということで、遅れている子にはボランティアの親が手助けするんです。宿題もないからノートも置きっぱなしで、生徒が手ぶらで学校に来るのにはびっくりしました」授業の準備に時間をかけた堺さんは、2000枚近くの折り紙はもちろん、日本の小学校の一日を写したビデオに教科書などたくさんの教材を用意していった。ビデオを見た教師や生徒からは質問が殺到する。「なぜ生徒が掃除をするのか」「体育着や赤白帽は何のためにみんな同じなのか」「給食も一緒では教師の自由時間がないのでは」・・・・・・。何でも横並びにそろえようとする発想や、目一杯働く先生たちの生活が、イギリスの人々にはとても奇妙に見えたのだ。「日本も少しずつ変わってきてはいるんですが、例えば教科書からあまり離れると上からも保護者からもクレームがきます。イギリスでは教科書にこだわらず、好きな題材で教師自身のカラーを出せる授業ができる。それがとても羨ましかったですねえ」2002年からは文部省の学習指導要領が変わり、小学校でも英語を含めた「国際理解」の総合学習がいよいよスタートする。堺さんの貴重な体験が、新しい形の授業に生かせる日も近いかもしれない。