自分のできる事から、動物と自然のために
粕谷久美子さん
アメリカ
私が今研修しているのはひな鳥を保護するチーム。鳥かごがぎっしり詰まった部屋の中には20種類ほどのひな鳥が保護されており、数人のスタッフが交代で世話をしている。私のおもな仕事は、ひな鳥に餌を与えること。時間があれば、ほかのスタッフの手伝いもする。ひな鳥の餌となるのは、おもにドッグフードをお湯で柔らかくしたもの。しかし、大型のひな鳥には飼料用のネズミをハサミで切って与えることがある。初めは嫌がった私も、今は平気でネズミをカットできるようになった。「ここへ来た当初は、鳥に愛着を持てなかったんです。猫や犬と違って何の感情もないと思っていましたから。だけど毎日接しているうちに、一羽一羽いろんな表情をしていることがわかって、だんだんかわいく思えてきました」ある日、生まれたばかりのキツツキのひなが持ち込まれてきた。今にも死んでしまいそうなくらい衰弱していたが、私が数時間ごとに餌を与え、世話をするうちにみるみる元気に大きくなっていく。勢いよく餌をつつく姿を見ながら、私は次第に動物の世話をする楽しさを実感するようになった。「動物の本能ってすごいと思ったこともありました。保護していた鳥が成長して、次に同じ種類のひな鳥が保護されてくると、その大人になった鳥がひなの世話をするんです。人間が育てたにもかかわらず、本能がそうさせるんです。ちょっと感動しちゃいました」しかし、鳥たちへの愛着が深くなればなるほど、死に直面したときのショックは大きい。「元気だったのに、急に具合が悪くなって死んでしまう鳥もいます。そのたびにショックを受けて、自分の世話のしかたが悪かったんじゃないかって落ち込んでいました。でも周囲のスタッフに“この鳥は苦痛に耐えることより、死んで楽になりたかったの。クミコのせいじゃない”といわれました。いちいち悲しんでいては、ボランティアの仕事は務まらないんですよね」