学生たちから得たものは数知れない
阿保京子さん
シンガポール
私はカレッジインターンとして星日文化協会JCS日本語学校という民間学校に派遣されました。ここは、子どもから会社役員まで約1800名が学ぶ、現地では最大の歴史ある日本語学校です。初級〜上級クラス、日本語能力試験対策クラス、プライベート・グループレッスンを受け持ちました。学校が日本語能力試験の会場になっていたので、試験監督のようなこともやりました。生徒は1クラス20〜40名。声にメリハリをつけたり、カラフルなイラスト教材を使って、できるだけ生徒の興味をひくように心がけました。中でも効果的だったのは、現物を見せること。例えば、「高野豆腐」をいくらことばで説明しても、彼らには理解しにくいんですね。向こうのスーパーには日本の食材も置いてあるんですが、それが食べ物とは思っていなかったみたいで。『まるでセッケンだ!』とすごくビックリしていました。あと、日系企業に勤めている人が多かったので、ビジネスレターの書き方や電話応対の仕方なども好評でした。敬語、マナー、会社のシステムなどの授業では、銀行での実務経験が非常に役立ちました。学校内に茶道クラブがあったんですが、以前お茶を習っていたので、その指導にもあたりました。
 休日は、ホテル内の会員制プールやジム通い、現地のアマチュアオーケストラに入団してコンサートに参加したり、マレーシア・インドネシアなどへの小旅行と、プライベートも充実した日々を過ごしました。多民族国家のシンガポールでは、文化、習慣、生活のすべてが新鮮で、教えると同時に学生たちから教わったものも数知れません。ただ、ひとつだけ心残りがあるのです。やはり、英語はもっと勉強しておくべきでした。銀行員時代、一応、英会話教室に通ったんですが、あまり役に立たなくて。それから、現地の歴史や日本との関係について、特に戦争などの暗い部分は、知識として持っていないと問題になるかもしれません。日本語を学ぼうとしている外国人たちは、たいてい何か目標を持っています。彼らのそうした夢の実現を、いくらかでもお手伝いできること。それが、この仕事の一番の魅力でしょうか。帰国してから、日本語が全然話せなかった学生から日本語の手紙をもらったんですが、『この活動をやっててよかった』とすごく感激しました。