ガーデンセンターを手伝いながら
鶴木恵理さん
イギリス
鶴木さんが派遣されたのはロンドンからバスで2時間半ほど、サマセット州の小さな町、Frome。受入れ先は地元のガーデンセンター。朝の9時半から夕方5時まで、センターの仕事を実際に手伝いながら、イギリスの園芸事情を見てきた。「私は日本でもガーデンセンターに勤めていたのですが、種苗の管理や資材の発注などほとんどが『売る』仕事。ここは自前の温室も広いし、種苗を実際に『育てる』ことが中心でした」イギリスでは花が咲く前の、値段が安いごく小さな苗がよく売れる。その苗を8個ずつトレイに植えこんだり、毎日ハンギングバスケットを作ったり。「ハンギングバスケットは、日本でも最近よく見かけますが、イギリスでは本当にどこにでも飾ってあって、これほど盛んだとは思ってもいませんでした」2年前に卒業した短大の園芸科では「造園」を専攻していた鶴木さんだから、園芸の基礎については知識もあり、イギリスに来ても半分以上の植物にはなじみがあった。また出発前の半年間は英語学校やIIPのカルチャー講座「英語でガーデニング」も受講して、「やるだけはやった」園芸関係の単語。が、それでも例えば花には和名、ラテン語の学名、英語名、さらにコモンネームという通称名もあるため、初めはとても覚えきれなかった。「研修といっても仕事だから間違えたら困るし。育てあげた種苗を温室から店に運ぶという作業がかなりあったんですが、それはそれで植物の名前を覚えるためのいいチャンスでした」なんでもやりたくて、センターが引き受けている個人宅の庭作りも手伝わせてもらった。日本では造園はまだまだ男の仕事とされているが、ここでもスタッフ10人のうち、鶴木さんもいれて女性は2人。「それでもできることをやらせてくれるんです。一番大変だったのは芝生を植える作業かな。ロール状に巻いた芝を隙間なく敷きつめて行くのですが、男性3人と私とでまるまる2日かかりました」鶴木さんの場合、ホストファミリーはごく普通の家庭だったが、ホストマザーとガーデンセンターのマネージャーの奥さんが友人、という関係。「通勤は歩いて20分ほどで、日本よりはるかに楽ということもあったんですが、夏は夜10時まで明るいので、夕ごはんを食べてお風呂に入ってからパブや映画を見に行ったりするんです。仕事のあとリラックスできる時間がある。まず生活があって、仕事はその一部なんです。それが本当に羨ましかった」休日はホストとマネージャーの家族とが、代わりばんこに各地のフラワーショーやナショナルトラストの庭などに連れていってくれた。「気候も庭の大きさも違う日本ではイギリスのマネはできません。ただ私はこれまではあまり冒険をしなかったんですが、植物の特性を知った上で、イギリスで学んだように、これからはもっと組み合わせを自由にしたにぎやかな庭作りもしてみたい。将来、新しい園芸を提案できるようになれたらいいな」